性感染症とは

主に性行為によって感染する病気のことを総称して性感染症(STD:Sexually Transmitted Disease)と言い、感染者の粘膜や皮膚と接触することで感染します。

STDの予防にあたってはコンドームが有効とされています。もともとコンドームは避妊具として使用されているものですが、感染者の病原体が含まれた精液や膣分泌液の粘膜への侵入を防ぐ効果もあるとされています。それでも絶対に性感染症に感染しないということはありませんが、感染リスクは下がります。なお性行為の際に毎回、コンドームを使用している場合でも、性病検査は定期的に受けられるようにしてください。

主な性感染症

梅毒

梅毒は、細菌の一種である梅毒トレポネーマに感染することで発症します。主に性行為中に口内や膣などの粘膜から同菌が侵入することで感染、発症していきます。

発症までの潜伏期間は約3週間です。初期症状としては、感染した部位で痛みが伴わない、できものやしこりが現れます(第1期)。これを放置していても数週間で自然に消失することが多いです。しかし、皮膚症状が消えたとしても細菌は残り続けます。その後、感染から3ヵ月程度で発疹がみられるようになります。発疹は足の裏や手のひらに主に現れますが治療をしなかったとしても数週間~数ヵ月で症状は消失します(第2期)。その後は数年~10数年程度は自覚症状が出ません。その後でゴムみたいな感触の腫瘤が全身に発生します(第3期)。さらに進行すれば、大動脈瘤や慢性髄膜炎、神経障害などの症状が出ます。(第4期)。

検査は採血で感染状況を調べます。尿検査だけでは診断できないため性病を疑う場合には同時に検査することを推奨しています。検査を行う際は感染から約3週間経たないと見逃されてしまう可能性があります。
治療としてはペニシリン系の抗菌薬を服用します。

淋菌感染症

性交や類似行為によって、淋菌に感染すると発症します。発症までの潜伏期間は2~7日です。
男性の場合、主に尿道炎を起こし、かゆみや膿、排尿時痛などの症状がみられます。女性の場合は子宮頸管炎を起こしやすく、おりものの色が緑黄色、おりものの量が多い、尿道から膿が排出されるなどの症状がありますが、症状が軽い場合があり本人が感染に気づかないこともあります。上行感染が起きると骨盤内炎症性疾患(PID)や不妊の原因となることもあるので注意が必要です。また咽頭感染することもあります。
検査としては尿や分泌物の検査で診断します。
治療は抗生物質の内服、点滴を行います。治療後に陰性確認が必要となります。

性器クラミジア感染症

クラミジア・トラコマチスと呼ばれる細菌に性行為等によって感染し発症します。潜伏期間は約1~3週間です。

男女ともに比較的自覚症状が出にくいと言われています。症状としては、男性では尿道から膿が出る、排尿時に痛み、尿道に違和感や痛みなどがみられます。女性であれば、下腹部痛、おりもの増量、不正出血、性交痛などです。感染の状態を放置すると不妊の原因になるほか、上行感染をきたせば骨盤内炎症性疾患(PID)などを引き起こすこともあります。

B型ウイルス性肝炎

肝臓に炎症が起きている状態を肝炎と言います。原因としては、ウイルス、薬剤、自己免疫、アルコールなどがあります。その中のB型肝炎ウイルス(HBV)に感染し、肝炎を発症している状態がB型ウイルス性肝炎です。

このHBVは、血液、精液、膣分泌液等に含まれているので、性行為も感染経路のひとつとされています。潜伏期間は1~6ヵ月と言われています。

HIV感染症

Human Immunodeficiency Virusの略称がHIVで、ヒト免疫不全ウイルスとも呼ばれます。このHIVは、血液、精液、膣分泌液に含まれやすいとされています。そのため、性行為をはじめ、母子感染、注射器を使い回すなどすることで、粘膜や傷口などから同ウイルスが侵入し、感染していきます。ちなみに咳やくしゃみなどで、感染することはありません。
2~4週間ほどの潜伏期間を経て、インフルエンザのような症状(発熱、喉が痛い、関節や筋肉の痛み、頭痛 等)のほか、発疹(小さく赤い発疹)などもみられます。それでも数週間で症状が消えてしまいます。それから自覚症状がみられない状態が数年~10数年続くことになります(無症候期)。

ただその間もHIVは増殖し続け、体内の免疫細胞は徐々に減少していくなどして免疫機能は低下していきます。病状がさらに進行すると、健康体では何でもないとされる病原体にも感染して発症するようになります(日和見感染)。また悪性腫瘍もみられやすいです。これらの症状が現れているとエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)ということになります。

尖圭コンジローマ

性交もしくは類似する行為によって、皮膚あるいは粘膜の小さな傷からヒトパピローマウイルス(HPV:主に6・11型)が侵入して感染することで、性器や肛門の周囲に鶏冠やカリフラワーの形に似たイボが発生することがあります。

潜伏期間は3週間~8ヵ月程度とされ、自覚症状が出ないこともありますが、人によっては痛みやかゆみがみられることもあります。また外陰部にしこりがみられるほか、女性ではおりものが増量することもあります。

HPVを完全に除去することは困難であり、再発率も高いことが特徴です。治療としては薬のクリームを患部に塗ることになります。